2010年6月26日土曜日

人感センサー

 小野さんの家自宅のすぐ側に、大きなお屋敷がある。その地域の大地主の家で、旦那さんは整形外科医だという話だ。
 小野さんの子ども達は、姉妹二人とも、まだ幼い頃から、その屋敷の前を通るのを嫌がった。怖いのだという。その屋敷の前が小学校までの通学路なので、毎朝その前を通るのだが、朝や昼間は仕方なくといった感じで走り抜けるし、夕方以降になると、絶対にそっちを通りたく無いと涙目で言う。
 夕方クラブ活動で遅くなる時には、わざわざ回り道をして戻ってくることもある。
「何で怖いの?」
 ある時、小野さんは自分の娘達に尋ねたことがある。姉妹がなんで怖がるか、自分にはよく分からなかったからだ。
 妹の方が、
「ママ、分からないの?」
 そう言うと、姉の方が、
「あの家、黒いのが一杯いて、あの前を通るとついてくるんだよ」
 と言った。小野さんは信じられなかったが、確かに娘達には幼い頃から霊感らしいものがある。姉妹揃って言うのだから、母として信じない訳にもいくまい。
「ママ、信じないなら見せてあげる」
 姉の方がそう言うと、靴を履いて道に出た。
「一緒に来て」
 ついて行くと、屋敷の前だった。
 その屋敷のガレージは、前を通ると、人感センサーで明かりが点き、通り過ぎるとすぐ消える。それは小野さんも知っていた。
「見ててね」
 姉はそう言うと、ゆっくりガレージの前を通り過ぎた。パッと明かりが点いたが、通り過ぎるとすぐ消える。小野さんが何を言いたいのかしらと思って見ていると、誰も通っていないのに、再度明かりがパッと点いた。
「お姉ちゃんの後ろ、今男の人がいる」
 小野さんの横で妹がぼそりと呟いたという。

この話の呟き怪談バージョンを読む

0 件のコメント:

コメントを投稿